血管炎性ニューロパチーのほとんどの患者は四肢遠位部優位の運動感覚障害または感覚障害をきたし、痛みを伴う頻度が高いことが臨床症状として重要です。左右差のある多発性単神経障害の形をとっていれば血管炎性ニューロパチーである確率はさらに高くなります。最も重要なのは「血管炎そのものを証明する」ことです。血管炎が直接的に証明できれば、血管炎性ニューロパチーの診断が確定します。血管炎による虚血に起因する「軸索変性を証明する」ことも重要です。
●「血管炎の証明」
血管炎の病理所見としては、フィブリノイド壊死や内弾性板の断裂、炎症細胞の血管壁とその周囲への浸潤が典型的です(図5)。
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図5 血管炎の病理所見
提供:山口大学大学院医学系研究科 神経内科学 教授 神田 隆 先生
腓腹神経生検は、末梢神経障害の現場を形態的に見る検査としてとても重要です。神経生検で血管炎が証明できる確率は50~60%といわれています
2)が、腓腹神経に加えて短腓骨筋を同時生検することで検出率は15%上昇します
3)。末梢神経と筋肉を同時に生検することで診断の陽性率が上がります。
さらに、間接的に血管炎の存在を示唆する所見も重要です。
① 神経束内、神経束間での神経線維密度低下やミエリン球の分布の差異の存在
② 神経周膜の肥厚
③ 神経上膜内中小動脈の再開通所見
などが虚血性障害を示唆する間接的な所見として有用です(図6)。
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図6 間接的に血管炎を示唆する病理所見
提供:山口大学大学院医学系研究科 神経内科学 教授 神田 隆 先生
●「軸索変性の証明」
血管炎では、血管が閉塞した結果として軸索が変性します。有髄線維は中心に軸索があり、その周囲に髄鞘があるというドーナツ状の形態をとっています。正常な有髄線維は髄鞘2:軸索6:髄鞘2の割合のドーナツ状になっていますが、軸索変性では軸索が崩壊するためこの関係が崩れます。軸索が潰れると、ミエリンが凝集したような形態(ミエリン球:myelin ovoid)になります。この状態になると神経線維としては機能しませんが、神経細胞体が生きている限り、不十分ですが再生がおこります(図7、8)。
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図7 軸索変性と再生過程
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図8 EGPA患者でみられる軸索変性(急性期)
提供:山口大学大学院医学系研究科 神経内科学 教授 神田 隆 先生