2017年4月の日本リウマチ学会において発表された「心筋炎による心原性ショックを契機に診断し得たEGPAの一例」について、その診断と治療の詳細を聖路加国際病院 岡田正人 先生に詳細をうかがいました。
【症例】70歳代後半、女性 【既往歴】気管支喘息(20年前に診断)
来院2週間前に右上下肢の筋力低下を呈し、近医を受診、頭部MRIにて脳梗塞と診断された。入院時白血球19,000/μL、好酸球増多69%(13,500/μL)を認めた。来院当日精査目的に他院へ転院搬送中に胸痛を訴え、血圧80/65mmHgまで低下、当院循環器内科へ救急搬送となった。来院時心原性ショック状態であり、急性冠症候群や心筋炎を疑い緊急冠動脈造影と心筋生検を行ったが、冠動脈病変を認めなかった。 大動脈バルーンパンピング補助下でICU入室となり、当科コンサルトとなった。好酸球増多と心筋炎から好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)を疑いステロイド投与を開始した。MPO-ANCA、PR3-ANCAは陰性、下肢神経伝導速度検査で多発単神経炎あり、MRIで右副鼻腔炎を認めた。心筋病理では線維化、顆粒球、好酸球の浸潤を一部伴う心筋炎との結果であり、EGPAによる心筋炎と診断した。治療翌日より好酸球は40/μlへ低下、治療10日時点 で心機能はEF10%から40%へ改善した。経過中下肢神経障害の進行がみられたため、大量γグロブリン療法を0.4g/kg/day 5日間施行した。
本例は重篤な心筋炎(劇症型)の合併があり、EGPAの中でも比較的珍しいケースでした。こうした症例に対する治療法は確立されていません。そこで好酸球増多を伴う劇症型心筋炎でEGPAを疑うべき教訓例と考え報告することとしました。
画像所見
【胸部X線検査】両側胸水あり、心胸郭比68%、右中下肺優位に浸潤影
【心電図】左軸偏移とV4,5,6にて軽度のST低下
【心臓超音波検査】EF15% びまん壁運動低下
【冠動脈造影検査】冠動脈に有意狭窄所見なし
【針筋電図】多発単神経炎の所見
運動神経では正中、尺骨、脛骨神経のCMAPで振幅低下 感覚神経では正中神経、腓腹神経のSNAP振幅低下
【心筋生検】検体不良でわずかな好酸球の浸潤のみ確認された
【心筋MRI】血管支配に関係なく左室全周性に内膜下に浮腫性変化/遅延造影あり(下図)