①発症、寛解に関する制御性T細胞、Th17細胞
喘息に合併する慢性好酸球性肺炎(CEP)はEGPAの前段階ともとらえられますので慎重に確認を進めますが、多くはEGPAを発症しません。IL-10産生CD4
+CD25
+T細胞の制御性T細胞(Treg)の数は、CEP合併喘息患者ではCEP発症時に維持されているのに対し、EGPA患者ではEGPA発症時や再燃時には極めて少なく(図2)
12)、TregがEGPAの発症・寛解に大きく関与していることが推察されます。
また、血管炎への関与が示唆されるTh17細胞については、末梢血中のTh17細胞数と好酸球性大腸炎の病理組織の各指標(粘膜下好酸球数、腺窩-腺窩間および基底膜-腺窩の距離)に正の相関が示されており
9)、血液を調べることで大腸の様子をある程度推察できることもわかってきています。
(図2)慢性好酸球性肺炎(CEP)合併喘息とEGPAにおけるTreg細胞数の比較
②頻回再燃例におけるB細胞の機能異常
2年に1回以上の頻回再燃群(19例)と、2年に1回未満の稀少再燃群(26例)における検討では
13)、B細胞のアポトーシス誘導蛋白であるCD95を発現するB細胞数が頻回再燃群で多く、頻回再燃群ではB細胞が枯渇します。また、稀少再燃群ではステロイド投与量が多い場合には血清IgG量が低下するもののステロイド減量により血清IgG量が増加、つまりIgG産生能が回復するのに対し、頻回再燃群はステロイド投与量にかかわりなくIgG量が少ない状態が維持されることが示されており、頻回再燃群ではIgGを産生する免疫能の低下が推測されます。
③樹状細胞の分化誘導異常
EGPAにおける樹状細胞分化誘導経路を再現した検討では
14)、ステロイド投与前には未熟な樹状細胞(CD206
+樹状細胞)が多く、寛解誘導後には成熟樹状細胞(CD83
+樹状細胞)が多く誘導されることが観察されました。また、CD206
+樹状細胞数とCD83
+樹状細胞数には負の相関、CD83
+樹状細胞数とTreg数には正の相関が確認されており、治療により樹状細胞の成熟度が増すことでTreg数が増加することが示唆されます。
④自然免疫の関与
血管炎への自然免疫の関与については今のところ十分にわかっていませんが、2型自然リンパ球(ILC2)数はEGPA発症時に最も多くなり、ILC2活性化サイトカインであるIL-33の血清中濃度はEGPA再発時に最も高くなることが示されており
15)、EGPAへの関与がうかがわれます。一方、ILC2数およびthymic stromal lymphopoietin(TSLP)は末梢血好酸球数と正の相関を示すのに対して、血清中IL-33濃度と末梢血好酸球数には相関が認められませんでした
15)。IL-33は好酸球とは関連がないこと、また血管内皮に発現していることを鑑みると、IL-33は血管炎の病態を示す指標の可能性があると考えています。
参考文献
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