Vol.5 神経内科-呼吸器内科編
Chapter. 2 こんな患者さんを見逃していないか!

Q. EGPAにおける神経障害の特徴について教えてください。

服部先生
 血管炎の場合、肺、心臓、腎臓などの臓器障害が全身的におきてくるため、治療に際しては、どうしても全身管理に集中することが多くなります。したがって痺れや動きが悪いといった症状は認識されにくく、結局、全身状態の管理が一段落した後に、どうも動きが悪いようだとか、痺れが続いているようだということが問題になり、そこではじめて神経症状が認識されることがあります。
釣木澤先生
 血管炎の発症時には患者さんは最もつらい症状を訴えますので、例えば心臓に症状がある人の場合、胸痛、背部痛、動悸、肩の放散痛などが多く、このような患者さんは軽い痺れがあったとしても、それをあまり訴えません。つまり医師の側から神経症状について尋ねないと見逃してしまう可能性があるということです。
服部先生
 釣木澤先生のおっしゃる通りで、神経症状はある程度専門的な立場から診ないとわかりません。つまり血管炎を診ている立場から疑ってかからないと見落としてしまいます。
現代医療は細分化されているため、専門外の領域について評価することが難しくなっており、それが血管炎を診断するうえでのピットフォールになっています。したがって血管炎の可能性を念頭に置くようなトレーニングを受けたエキスパートでないと、EGPAを見過ごしやすいといえます。
釣木澤先生
 確かに神経障害は認められないけれど末梢血の好酸球数が増加し、診断がはっきりしない、ということで紹介されてくる患者さんが実は末梢神経障害があったということはよくあります。これは神経障害について聞き出せていないということだと思います。

Q. そのように見逃されがちな神経症状を患者さんから引き出す際の問診のコツについて教えてください。

釣木澤先生
 私たちが最初にする質問は、「手足の先端が痺れていませんか」というものですが、患者さんが中高年以上の方の場合は、頚椎の障害などによる痺れを訴える方もいます。そのような場合は、特に下肢の痺れについて注意深く聞くようにしています。また痺れはあまりなくても新しいペットボトルを普通に開けられるかどうかを聞くとよいと思います。他にも顔を洗った時に、指の隙間から水がこぼれるかどうかを確認することや、新聞や雑誌の頁をめくりにくくなったかどうかを聞くのもよい方法だと思います。
服部先生
 神経内科医は筋力を調べることに慣れていますが、症状があまり軽いようなケースですとEGPAだと気がつかないこともあります。こういうときには、今、釣木澤先生のお話しに出たように、ペットボトルの蓋を開けられるかどうかを尋ねることがよい手掛かりになります。大切なことは、日常生活のささいな動作ができるかどうかについてしっかり聞くことで、それも簡単な質問をする方が参考になります。例えば表1のようなシンプルでわかりやすい質問を行うことで、難しい神経観察を行うよりも患者さんの状況についてスピーディかつ豊富な情報が得られます。また、血管炎の専門家でなくても、EGPA患者さんの日常生活における支障が理解できるようになると思います。

表1 運動機能の評価項目

●未開封のペットボトルのキャップを手で開けられるか
●顔を洗うとき水がこぼれないか
●新聞や雑誌をめくることができるか
●掌を強く握りしめた後、勢いよく開くことができるか
●立った状態でかかとをあげる(爪先立ち)ことができるか
●くつやスリッパが脱げてしまうことはあるか
●スムーズに階段の昇り降りができるか
●不自由なく歩けるか

※表1 運動機能の評価項目をダウンロードしてご使用いただけます。巻末をご参照ください。

Q. 痺れや運動障害を評価するときは、どのような指標に基づいて判断したらよいのでしょうか。

釣木澤先生
 これはなかなか難しくて、例えば運動選手だった人でMMT(徒手筋力)は5で特に問題がなくても、発症してしばらく経過すると上腕と前腕の太さがかなり違ってきて、すでに萎縮が始まっているというケースがありました。誘発筋電図検査を行っても、麻痺があるのに正常の結果を示すなど指標にならないこともあります。したがって、痺れの症状については上手に聞き出して評価するのが一番よい方法だと思います。
過去に神経内科の先生に相談したことがありましたが、痺れの強さを数値で評価するものはあまりないということでしたので、私なりに痺れを評価するスコアを作ってみました(表2)。評価の基準は11段階に分け、10に相当する「感覚なし」が最も悪い状態で、痛み刺激に対する感覚がない状態です。そして痺れの一番強い状態は痛みに近いズキズキとするような感じです。それがやや弱くなると電気が走るピリピリするような感じ、そしてじんじんする感じからムズムズ、痒いような感じと下がっていき、違和感や軽い違和感と続き、0が症状のない正常の感覚になります。この変化を見て多発単神経系の痺れの有無や重症度を評価します。

表2 しびれの評価

10:感覚なし
9:ズキズキ、痛い
8:電気が走るようなビリビリする感じ
7:じんじんする感じ(強い)
6:じんじんする感じ(中くらい)
5:じんじんする感じ(弱い)
4:ピリピリする感じ
3:ムズムズ、痒いような感じ
2:違和感がある(薄皮が張ったような感じ)
1:ごく軽い違和感、間欠的な違和感
0:症状なし(正常の知覚)

※表2 しびれの評価をダウンロードしてご使用いただけます。巻末をご参照ください。
服部先生
 痺れは手足の先端に多くみられますし、患者さんは足の裏に薄皮が1枚被った感じがする、手の先の方にいやな感じがあるなどと訴えることが多いですね。評価についても、感覚がない、違和感がある、ムズムズあるいはピリピリといった表現を使うことは重要だと思います。以前ギターのプロフェッショナルの方を診たときのことですが、彼の演奏は私が聞く限りは上手だと思ったのですが、本人はプロフェッショナルとしては全くダメで、弦を抑えたり弾いたりするときに手がジンジンする感覚があるので、これをなくしてほしいと訴えていました。こういった評価を今までの治療にプラスアルファすることが重要で、その際には患者さんのQOLに直結する手足の先端の感覚についてきちんと評価することが大切です。釣木澤先生のおっしゃっているような、じんじんからピリピリ、ピリピリからムズムズといったように症状が変化していく経過を追っていくことが大切で、治療の反応性を見たり、まだ悪い状況が続いているなら、さらに治療を追加する必要があるかどうか検討する際にも参考になります。ぜひ、先生方にこのような評価を行っていただきたいと思います。
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