vol.4 整形外科-呼吸器内科編 in高知
Chapter. 2 EGPA診断の重要性について

Q. 自験例を通して得られた、EGPAにおける診断のポイントをお聞かせください。

時岡先生
 EGPAの発症は中高年の方に多く、痺れや麻痺がみられることが特徴です。ところがこの年代では、加齢に伴い脊椎や頭部に多少なりとも病的な神経所見が見られることも少なくないため、症状からは通常の整形外科的疾患と誤診されがちです。EGPAでは、MRIなどで得られた神経所見と麻痺などの臨床症状とが合致しないことが鑑別のポイントです。また、日常診療でよく遭遇する頚髄症や通常の脊椎疾患などと比べると、EGPAでは患者さんの痺れの度合いが非常に強いことが特徴です。
 ただこれも、対応する医師がEGPAを知らなければ分からないことで、事実私も当院に勤務する以前には、経験も知識もありませんでした。
浦田先生
 非常に重篤な例で、狭心症発作が進み、ついにはCPA(心肺停止状態)を起こした方がいました。CPAはなんとか脱したのですが、その後循環器系の治療をしたものの、どうも予後が良くない患者さんがいました。調べてみたら好酸球が非常に多く、実はEGPAであったというケースでした。EGPAはさまざまな科の医師が遭遇する可能性がありますので、疾患知識の習得はとても重要だと思います。
 ちなみに、整形外科的疾患による痺れと、EGPAを原因とする末梢神経障害による痺れは、明らかに違うのですか。
時岡先生
 はい。違いは明らかで、EGPAの方が痺れは非常に強いです。例えば椎間板ヘルニアですと痛みは強いのですが、痺れはそれほどではありません。また、脊椎疾患では、症状は障害された部位だけに現れますが、EGPAの場合は多発性単神経炎型で、障害部位以外にも症状はあちこちに出現します。特にヘルニア手術の術前などに行う高位診断(障害部位と麻痺などの症状との整合性をみる)時に、整形外科医はそれらが合致するかどうかをしっかり確認することが重要です。
浦田先生
 私も現在までにEGPA は十数例経験しておりますが、MRI所見から整形外科的疾患とEGPAを鑑別するのは難しいですね。障害部位と麻痺などの症状との整合性については、それこそ時岡先生のような専門家のご意見を伺うことができれば心強いです。
 時岡先生がご経験された3症例はみな、筋力低下から下垂足を起こしていたとのことですが、治療をして寛解維持しても、EGPA患者さんでは痺れや感覚障害は最後まで残ることが多く、それがこの疾患の一番厄介なところですね。
時岡先生
 おっしゃる通りです。ですから、そうした後遺障害を少しでも残さないためには、早期診断が何より重要です。整形外科の立場からは、MRIなどの画像診断と臨床症状が合致しない―具体的には、
 1)画像所見に比べて痺れが非常に強い
 2)障害部位よりも麻痺や痺れが広範囲に出現する
 3)病的な腱反射がない
 などですが、これらをきちんとチェックすることが大事です。そうして、このような異常に気づいた場合には、喘息の既往歴や血液検査における好酸球数増多の有無などを確認し、必要に応じて呼吸器内科などにコンサルトすることが大切です。
浦田先生
 上述の3例では、血液検査で好酸球がほぼ50%を超えていましたね。ここまで好酸球が増える疾患というのはある程度限られてくるので、呼吸器内科としては、好酸球数をチェックすることが大事だと思います。特に、喘息の既往とともに、喘息から好酸球性肺炎を合併した患者さんは、EGPA発症の確率が高いので要注意です。
 EGPAでは、先ほどのCPA例や腹痛、穿孔性腹膜炎など、それこそいろいろな臓器に症状を呈しますので、各科領域の医師がこの疾患をきちんと知っておくことが重要です。そうでないと、患者さんはいろいろな科を回ることにもなり、診断の遅れにつながります。
時岡先生
 私自身がそうでしたが、整形外科医の中でもEGPAの認知度は低いのが現状です。当科でも症例の経験を通じて学ぶことが多かったのですが、そのかいあって、診断に至るスピードも徐々に早まってきているのは良い成果だと思っています。
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