vol.4 整形外科-呼吸器内科編 in高知
Chapter. 1 整形外科が経験したEGPA症例について

※紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

Q. 高知医療センター整形外科へ救急搬送された患者さんの中で、3例がEGPAと診断されたそうですが、その時の様子や患者背景などを詳しくお聞かせください。

時岡先生

【腰椎椎間板外側ヘルニアにより、手術予定であった例】

 1例目は53歳の女性です。左L5/S1の腰椎椎間板外側ヘルニアの診断で、近医よりヘルニアの手術目的で紹介される予定でした。ところが、急激に左下肢痛と右下肢の痺れが現れ、脱力および麻痺も強くなったことから緊急手術が必要という連絡を受け、患者さんは当院のドクターヘリにて搬送されて来ました。
 初診時の身体所見では肺浸潤像がみられましたが、発熱はありません。SLR(下肢伸展挙上)テストでは左下肢60度で陽性、MMT(徒手筋力)テストで膝は正常でした。しかし、足関節の背屈、底屈、母趾の伸展ともにMMTが1と低く、筋力低下が認められました。深部腱反射は、膝蓋腱は正常でアキレス腱反射が消失、病的なBabinski反射はありません。知覚障害は、左下腿の外側と足底まで痺れる知覚鈍麻がありました。この時点で、MRIで得られた腰椎椎間板ヘルニアの所見と臨床症状が合致しないため、違和感を覚えました。
 また、血液検査ではCRP 0.83mg/dL、白血球14,770個/μL、好酸球が49.5%と著明に増加する好酸球増多症がありました。そこで、緊急に脊髄くも膜下造影も行いましたが、両下肢に麻痺が及ぶような所見や、脊柱管狭窄症なども見られず、胸椎にも異常はみられませんでした(図1、2)。ここに至って緊急手術の必要性に疑問を覚えました。実はこの方は、既往に喘息と好酸球性肺炎があり、当院の呼吸器内科で喘息の治療をしていましたので、呼吸器内科にコンサルトしました。すると、EGPAの可能性を指摘され直ちに転科、EGPAの診断がついてステロイドパルス療法が開始されました。これが私にとって初めてのEGPA例の経験です。

【脳梗塞として入院した例】

 2例目は63歳女性、主訴は四肢の痺れと両下肢脱力、咽頭痛と発熱でした。現病歴は、15日前から腰痛と両下肢の痺れが出現し、次第に両上肢も痺れ、下肢の筋力低下も認めたため、救命救急科を受診。既往歴には気管支喘息と橋本病がありましたが、胸部レントゲンでは特に異常を認めませんでした。救命救急外来受診時の身体所見は、体温37.2度、血圧正常、意識は清明で咽頭発赤がありました。胸部ラ音や心雑音はありませんでしたが、四肢に散在する紫斑が見られました(図3)。
 MMTテストでは上肢は正常なものの、両下肢に著明な筋力低下が認められました。深部腱反射は上肢、下肢とも異常なく、知覚障害は両足関節以下の知覚鈍麻がありました。血液検査の結果、CRP 7.63mg/dL、白血球が33,200個/μL、好酸球が66.5%と好酸球増多症でした。
 全脊柱のMRI像では頚椎、胸椎、腰椎とも狭窄、ヘルニアなどの明らかな異常は認めませんでしたが(図4)、頭部のMRIでは多発性ラクナ梗塞を思わせるような所見を認めたため(図5)、救命救急科医師の判断で脳神経外科に紹介となり、脳梗塞として入院。ところが、脳梗塞の診断としてはどうも不明瞭な点があったため、当科に相談がありました。所見を確認すると、麻痺症状とMRI所見の不一致や好酸球増多から、EGPAの可能性を疑いました。そこで呼吸器内科へコンサルトしたところ、やはりEGPAの診断となり、中枢神経障害を伴った重症例として、直ちにステロイドパルス療法が施行されました。

【頚髄症との診断だったが、麻痺が急速に進んだ例】

 3例目は75歳の女性です。四肢の痺れと左上肢の脱力から始まり、2週間ほどで急速に歩行困難に至ったため、夜間に救急車にて搬送されて来ました。既往歴にアレルギー性鼻炎と気管支喘息があり、左肘の伸展と左手関節の背屈、および手指の伸展が低下しており、握力は右12kg、左は1kgでした。知覚障害は両上肢の痺れがありましたが、病的反射はありませんでした。MRIでは頚椎の狭窄が認められました。(図6) 実際この方は前医で頚髄症と診断されていましたが、麻痺が急速に進んだのでご自分で救急車を要請されたとのことです。なお、この方も皮膚には紫斑が認められました(図7)。
 血液検査では白血球23,530個/μL、好酸球が59.2%ありましたので、今までの当科での経験から当直の整形外科医がEGPA疑いと判断し、翌朝すぐに呼吸器内科にコンサルトしました。すると、やはりEGPAと診断され、ステロイドパルス療法が施行されました。その後、経口ステロイド45mg/日投与から漸減していきましたが、好酸球数などが改善し、麻痺の方も順調に回復して歩けるようになり、20mg/日投与時点の51日目で退院されました。
page top