Vol.3アレルギー科-呼吸器科編 in広島
Chapter. 1 自験例のEGPAと診断アプローチについて

Q. 現在、どれくらいの喘息患者さん、およびEGPA患者さんを診療されていますか。

保澤先生
 当院は広島市内の2ヵ所(光町、八丁堀)にクリニックを開設していますが、現在はその2施設で、延べ2,000人ほどの喘息患者さんを診療しています。その中で好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(以下EGPA)患者さんは10例ほど含まれています。EGPAでは、喘息以外にも多臓器に症状が現れることが特徴であり、当院の患者さんにも軽度の心機能障害を合併している方もいますが、しびれなどの末梢神経障害は全例に合併しています。

Q. EGPA症例と初めて遭遇された時の様子、および現在診療されている患者さんの治療経過などについてお聞かせください。

保澤先生
 私が初めてEGPAに遭遇したのは、今からおよそ20年前の勤務医時代(マツダ株式会社マツダ病院 呼吸器・アレルギー科部長)です。50代男性の喘息患者さんでしたが、ある時喘息が急激に悪化して、コントロールが困難になりました。もともと服薬アドヒアランスがあまり良くない方だったのですが、短期間のうちに心不全や脳血管障害、視野狭窄、神経障害、皮膚症状など、消化器症状こそなかったものの、それこそ教科書通りの全身症状が出現しました。こうした臨床症状に加えて、皮膚生検にて血管炎の所見が確認できたので、EGPAの確定診断に至りました。当時は医療者の間でEGPAへの注意喚起がようやく叫ばれ始めた頃で、私もこのことが頭になければ、診断に難渋し、治療開始も遅れていただろうと思われます。この方の場合は典型例だったことが幸いし、すぐにステロイドパルス療法(methylprednisolone 0.5~1.0 g/日)と免疫抑制剤の併用療法を施行、院内の脳神経外科や眼科などとも連携して障害臓器の診療に当たりました。この患者さんは、70代の現在でも自転車で当院に通院しておられ、プレドニゾロン(PSL)7mg/日投与にて寛解維持し、特に大きな後遺症や不自由などはなく、日常生活を送られています。
 その後、2003年に当院を開業してからは、重症化した喘息や副鼻腔炎などの鼻症状、好酸球増加、末梢神経障害などの定型的な血管炎症状を合併した方ではEGPAの診断基準に照らし合わせ、臨床的に診断がついた方に関しては、ステロイドによる治療を開始しています。当院ではEGPAが重症化する前の早期発見、また早期治療を心がけています。そのため診断早期からPSL 40~60mg/日経口投与から開始し、その後状況をみながら漸減しています。

Q. EGPAにおける診断時の注意点についてお聞かせください。

保澤先生
 EGPAが疑われたら、末梢血好酸球や血清IgEの増加の有無などを確認するための血液検査、腎臓の障害を確認するための尿検査などを必ず行います。また、末梢神経障害に関しては、問診を通して神経学的な所見を取ります。
ただし、多くの患者さんはすでに何らかの既往症で治療介入がされており、ステロイドが投与されている方も少なからずいます。そのため、検査値の評価には、個々の治療状況や背景を勘案する必要があります。また、好酸球増加がみられる場合には、EGPAのみならず、喘息のような喘鳴を生じることもある好酸球性肺炎の罹患にも要注意です。なぜなら、細菌性やウイルス性の一般的な肺炎に比べて、好酸球性肺炎では、たとえ重症化していても患者さん自身はそれほど身体に負担を感じないため、対処が遅れがちになるからです。なお、好酸球数はEGPAの診断において重要な評価指標となりますが、薬物投与によっても変動し、また重症のスギ花粉症などでは白血球中の20%を超えることもあるため、あくまで診断のための検査所見の一つと捉えるべきです。
page top