Vol.2 呼吸器内科-神経内科編 in新潟

Q. EGPAの臨床像や、その特徴についてお聞かせください。

長谷川先生
 当院で現在までに経験したEGPAの症例数は約25例ほど、うち7割が女性です。臨床症状としては喘息が必発で、それに続いて血管炎症状などが出現します。多発性単神経炎などの末梢神経障害に関しては、90%ほどの症例にみられます。ANCA(MPO-ANCA)の陽性/陰性率は1:2程度で、症例の80%近くに腎病変、25%に心病変が合併しています。
EGPAを特徴づける主要所見に好酸球数の増加がありますが、増加の程度が非常に特徴的です。単に喘息であれば、末梢血白血球数の7~10%、およそ500個/μL程度の増加に留まりますが、EGPAでは末梢血白血球数の25~70%、およそ1,000~2,000個/μL、場合によってはそれを更に上回る好酸球数と非常に高値になります。さらに、そうした患者さんでは喘息のコントロールも不良で、難治例が多々みられます。

Q. EGPAを含むANCA関連血管炎による神経障害の臨床的な特徴をお聞かせください。

河内先生
 ANCA関連血管炎のような血管炎では末梢神経障害が発症します。末梢神経障害は全身の末梢神経に障害が起こる多発神経炎、1つの神経だけに障害が起こる単神経炎、また単神経炎が各所に複数起こる多発性単神経炎の3つに分類されます。EGPAでは60~90%の方に多発性単神経炎がみられます。多発性単神経炎は、多発神経炎によるglove and stocking type(手袋靴下型:手袋、靴下を着けた部分に分布する感覚障害)の障害ではなく、血管炎の局所症状を反映した局在型の障害が複数箇所に分布します。通常、左右非対称ですが、重度になると多発神経炎と区別が難しい場合もあります。
 手よりも足に圧倒的に多く発症し、左右で非対称性に痛みやしびれなどの感覚障害、および筋力低下などの運動機能障害が現れます。運動機能障害の一つとして、足首の下が垂れる下垂足を起こす患者さんもよくみられます。

Q. EGPAの診断アプローチについてお聞かせください。

長谷川先生
 EGPAの診断の目安は、喘息があることと、好酸球の絶対数が著しく多くなることです。具体的には1,000個/μL以上あれば、そこにEGPAはかなり含まれると思います。EGPA以外では、真菌によるABPA(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)も考えられますが、その場合は特異的IgE抗体が高値となります。真菌に対する特異的IgE抗体が陰性であれば、EGPAの可能性が高くなると思われます。さらにほかの臓器病変や神経痛などが加われば、疑いはより濃厚になります。
河内先生
 血管炎による末梢神経障害では多発性単神経炎型で発症しますが、一方で、一般的な脱髄性疾患であるCIDP(慢性炎症性脱髄性多発根神経炎)やギラン・バレー症候群では多発神経炎型で発症することが多いことが特徴です。EGPAの急性期、特に人工呼吸器管理が必要なほどの重症例では時に多発神経炎のように見えることから、ギラン・バレー症候群と間違われることがあり、注意を要します。その点からも、両者を神経症候学的にいかに鑑別し、多発性単神経炎型であることを導き出すかが、EGPAの確定診断における一つのコツだと思います。また、EGPAによる末梢神経障害では、四肢の遠位部に強い痛みを伴うのが大きな特徴ですので、強い痛みがあれば診断の助けになります。
長谷川先生
 EGPAでは消化管出血のような重篤な合併症を起こす恐れがあります。したがって、可能な限り消化管の生検などを含めた病理学的診断と評価を行うようにしています。
河内先生
 病理学的検索では腓腹神経と短腓骨筋の評価を行います。しかし腓腹神経生検では採取部以遠の感覚障害を合併することがあること、必ずしも採取検体からの血管炎病理像の陽性率は高くないこと、さらに喘息の治療としてのステロイドが前投与により炎症細胞浸潤が消失し、病理像が修飾される場合があること、最も重要なことですが、血管炎による神経軸索障害が一旦生じると不可逆性の神経障害に進展することが多いことから、基本は病理学的評価を確認した後, 治療を行うべきではあるのですが、やむを得ず治療を先行する場合もあります。 ANCA測定に関しては長谷川先生のご意見を伺いたいのですが、喘息患者さんには最初から全例でMPO-ANCAを測る意義はありますか。
長谷川先生
 EGPAを発症してもMPO-ANCAが陰性の症例もあります。また陽性の場合も必ずしも活動性と一致しないケースもあると思います。もちろん診断の一助にはなりますが、ANCAの陽性/陰性と予後の相関性は、論文上も明快ではありません。
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