Vol.1 血液・免疫科-呼吸器内科編 in仙台

Q.EGPAの自験例における臨床像や背景因子などについてお聞かせください。

三木先生
 私が考えるEGPAの典型例は、喘息または好酸球性副鼻腔炎をベースとしてしびれや痛みなどの神経障害が併発するというパターンで、主治医としてあるいは相談として現在までに経験した(約10数)症例のうち約7~8割が該当していました。
石井先生
 当科では現在までに25例ほどの症例を経験していますが、リウマチや膠原病の患者さんとして来院される方が多いため、臨床症状としては主に関節痛や筋痛を訴えて来られます。喘息や好酸球性副鼻腔炎があってもたいていは既往歴として少し話されるくらいですが、EGPAにおいて喘息や好酸球性副鼻腔炎は必発です。また、全例の8~9割に末梢神経障害が発症し、特に下肢に圧倒的に多く現れます。他には、GPA(多発血管炎性肉芽腫症)のような副鼻腔症状も多く、脳梗塞や心筋梗塞などが現れることもありますが、これらは命にかかわりますので要注意です。
 臨床症状はANCAの陽性と陰性でも異なり、陽性例では紫斑や紅斑、リベド(網状皮斑)などの皮膚症状が多く、陰性例では心病変と間質性肺炎、好酸球性肺炎などの肺病変が多いです。なお、当科症例では全例を通して消化器病変と腎臓病変は少ないですが病院としての特性のせいかもしれません。
 年齢層は20~80代までと幅広く、また多くのリウマチ・膠原病だと女性患者さんが多いですが、EGPAの男女比はほぼ1:1で、性別・年齢ともに背景因子としてはなかなか特定できません。そのため、常にどのような患者さんでも起こり得るという認識が必要だと思います。

Q.EGPAの臨床病理学的特徴についてお聞かせください。

石井先生
 EGPAの病理に関しては、壊死性血管炎があることや、血管外に肉芽腫形成を認めることもある、などが特徴とされていますが、実際に生検組織をじっくり調べても、これらが確認できた症例は10%程度に留まります。そのため、病理的にEGPAの特徴とされる所見を認めない場合でも、直ちに診断から除外するべきではないと考えます。
 なお、末梢神経障害に関しては、複数の神経にあちこちに多発性に症状が出る多発性単神経炎の様相を呈するのが特徴です。また、神経障害には感覚障害と運動障害がありますが、感覚障害では一つひとつの部位を患者さんに確認しながら問診を進めていかなければならず、実際の現場では所見を取るのがなかなか大変です。対して運動障害は、片足の麻痺などから比較的すばやく患者さんから情報を得ることが可能です。
三木先生
 喘息との関連からいえば、喘息や好酸球性副鼻腔炎からEGPAへ移行するまでの期間は、必ずしも教科書通りではありません。3年以内の場合もありますが、10~20年くらいかけて移行した人もいます。喘息のコントロールに関しても、悪い人もいれば、最後の発作がいつだったかを本人が忘れているくらいコントロールの良い人もおり、この点はまちまちです。
 肺の病理に関しては、胸部画像で陰影(浸潤またはスリガラス陰影)を認めた場合に気管支鏡検査で経気管支肺生検を行います。好酸球性肺炎の診断は確定することが多いのですが、血管炎の検出率となると高くないため、EGPAまでの診断に至らないことがありうると思います。

Q.EGPAの診断アプローチについてお聞かせください。

三木先生
 診断への大きなヒントとしては、喘息に加えANCA関連血管炎に特徴的な左右非対称性のしびれや下肢痛が認められることです。
石井先生
 それは重要なポイントの一つですね。診断のアプローチとしては、そうした末梢神経障害や、あるいは皮疹など全身的な血管炎の範疇に入りそうな症状を聴取し、喘息や好酸球性副鼻腔炎の有無にも注意しながら、さらに検査結果では好酸球などの主要所見を評価していきます。皮膚症状も診断に重要な症状ですが、これに関しても本人からの申告がないとなかなか分からない場合が多々あります。とはいえ、患者さんは医師への遠慮などもあり、診療科以外の領域の症状に関しては、話さなくても構わないと考えがちなのではないでしょうか。
三木先生
 おっしゃる通りです。診断にあたる医師もそうした点に配慮し、気になる症状があれば何でも教えてください、ということを患者さんに再三お話しすることが大切だと思います。
 なお、診断の目安となるMPO-ANCAに関しては、以前は7割くらいが陽性といわれていたのが、最近では3~5割程度と報告されています。そのため、血管炎を疑わせるような他臓器の異常所見が喘息患者に認められても、ANCAが陰性だと診断の決め手に欠き、EGPAが見逃されているケースも多々あると思います。
石井先生
 むしろ注目すべきは末梢神経障害ですね。慢性炎症所見があって感染症などが否定された場合、三木先生がおっしゃるように左右非対称性の下肢痛、いわゆる多発性単神経炎の症状があれば、EGPAを含むANCA関連血管炎を疑う根拠となります。
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