「CHCC2012」の概要と改訂のポイント

「CHCC2012」の概要と改訂のポイント

新たなカテゴリーと名称の変更

 CHCC2012では従来の大型血管炎、中型血管炎、小型血管炎の3つのカテゴリーにVariable vessel vasculitis;VVV(多彩な血管を侵す血管炎)、Single organ vasculitis;SOV(単一臓器の血管炎)、Vasculitis associated with systemic disease (全身疾患に関連した血管炎)、Vasculitis associated with probable etiology(病因が判明している血管炎)の4つのカテゴリーが新たに加えられた 図1
 各カテゴリーと疾患名の分類およびその定義は表に示すとおりであり、CHCC1994の2倍以上にあたる26疾患が呈示されている。

小型血管炎は2つのサブカテゴリーに

 大型血管炎と中型血管炎の分類はCHCC1994と同じで変更はなかったが、小型血管炎はANCA-associated vasculitis(ANCA関連血管炎)とImmune complex vasculitis SVV(免疫複合体性血管炎)の2つのサブカテゴリーに分類された 図2

ANCA関連血管炎の疾患名称の変更

 顕微鏡的多発血管炎(MPA)は名称の変更がなかったが、Wegener肉芽腫症はGranulomatosis with polyangiitis;GPA(多発血管炎性肉芽腫症)に、Churg-Strauss症候群はEosinophilic granulomatosis with polyangiitis;EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)と変更された。

免疫複合体性血管炎の疾患名称の変更と新規疾患

 CHCC1994に記載されていたHenoch-Schönlein紫斑病がIgA vasculitis;IgAV(IgA血管炎)に、本態性クリオグロブリン血症がCryoglobulinemic vasculitis;CV(クリオグロブリン血症性血管炎)に名称変更された。さらにこのカテゴリーでは、anti-GBM disease(抗GBM病)とHypocomplementemic urticarial vasculitis;HUV(Anti-C1q vasculitis)(低補体血症性蕁麻疹様血管炎)の2疾患が新たに追加された。

人名を冠した疾患で変更されなかった疾患と新たに加えられた疾患

 小型血管炎の人名を冠した3疾患が病因や病態に基づく疾患名に変更された一方で、日本人の名前を冠したTakayasu arteritis(高安動脈炎)とKawasaki disease(川崎病)の名称は残った。また、人名がつけられた疾患として新たにBehçet’s disease(ベーチェット病)と Cogan’s syndrome(コーガン症候群)が加わった。

ANCA関連血管炎疾患の定義
EGPA 気道に主に病変を生じる好酸球に富んだ壊死性肉芽腫性炎症、および主に小血管・中血管を侵す壊死性血管炎。喘息および好酸球増加症と関連。鼻茸がよくみられる。糸球体腎炎がある場合に、ANCAの頻度は高くなる。
MPA 免疫沈着はまったくないかほとんどみられない壊死性血管炎。主に小血管(すなわち毛細血管、細静脈、細動脈、および小動脈)が侵される。小動脈・中動脈の壊死性動脈炎を伴うこともある。壊死性糸球体腎炎は非常によくみられる。肺毛細血管炎もしばしば生じる。肉芽腫性炎症は生じない。
GPA 上気道および下気道を主に侵襲する壊死性肉芽腫性炎症、および主に小血管・中血管(毛細血管、細静脈、細動脈、動脈および静脈)の壊死性血管炎。通常、壊死性糸球体腎炎がみられる。
 EGPAについては「腎臓疾患のないEGPA患者では約25%のみがANCA陽性であるのに対し、腎臓疾患がある患者では75%がANCA陽性を示し、壊死性糸球体腎炎が認められた場合は100%の患者がANCA陽性を示す。血管外病変として、肉芽腫性炎症に加えて、好酸球に富んだ非肉芽腫性炎症が肺、心筋および消化管でしばしば観察される。」と記載されている。
新規カテゴリーの疾患名称
 新規に追加されたカテゴリーに記載されている血管炎は、CHCC1994のCutaneous leukocytoclastic vasculitisがCutaneous leukocytoclastic angiitisに変更され、SOVのカテゴリーに入れられた以外、すべてCHCC2012において新しく登場してきた疾患である。
表 CHCC 2012で採択された血管炎の名称と定義
CHCC 2012名称 CHCC 2012定義
Large vessel vasculitis(LVV);大型血管炎
  • Takayasu arteritis(TAK);高安動脈炎
  • Giant cell arteritis(GCA);巨細胞性動脈炎
他の血管炎よりも大型動脈が侵襲されることの多い血管炎。大型動脈は、大動脈とその主要分枝である。あらゆるサイズの動脈も影響を受け得る。
Medium vessel vasculitis(MVV);中型血管炎
  • Polyarteritis nodosa(PAN);結節性多発動脈炎
  • Kawasaki disease(KD);川崎病
主要な内臓動脈とその分枝である中動脈が主に侵襲される血管炎。どのようなサイズの動脈も影響を受け得る。炎症性動脈瘤および狭窄がよく起こる。
Small vessel vasculitis(SVV);小型血管炎
実質内の小動脈、細動脈、毛細血管、および細静脈などの小血管を主に侵襲する血管炎。中動脈および静脈が侵される場合もある。
ANCA-associated vasculitis(AAV);ANCA関連血管炎
  • Microscopic polyangiitis(MPA);顕微鏡的多発血管炎
  • Granulomatosis with polyangiitis(GPA);多発血管炎性肉芽腫症(旧名Wegener肉芽腫症)
  • Eosinophilic granulomatosis with polyangiitis (EGPA);好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧名Churg-Strauss症候群)
免疫沈着がまったくないかほとんどみられない壊死性血管炎。主に小血管(すなわち毛細血管、細静脈、細動脈、および小動脈)が侵される。ミエロペルオキシダーゼ(MPO)特異性ANCAまたはプロテイナーゼ3(PR3)特異性ANCAと関連している。すべての患者でANCAが認められるわけではない。MPO-ANCA、PR3-ANCA、ANCA-陰性など、ANCA反応性を示す接頭語が追記される。
Immune complex vasculitis SVV;免疫複合体性血管炎
  • Anti-GBM disease;抗GBM病
  • Cryoglobulinemic vasculitis(CV);クリオグロブリン血症性血管炎
  • IgA vasculitis(IgAV);IgA血管炎(旧名Henoch-Schonlein紫斑病)
  • Hypocomplementemic urticarial vasculitis(HUV)(Anti-C1q vasculitis);低補体血症性蕁麻疹様血管炎(抗C1q血管炎)
主に小血管(例えば、毛細血管、細静脈、細動脈、および小動脈)の血管壁に免疫グロブリンや補体成分が中等度から高度に沈着する血管炎。糸球体腎炎が高頻度にみられる。
Variable vessel vasculitis(VVV);多彩な血管を侵す血管炎
  • Behcet's disease(BD);ベーチェット病
  • Cogan's syndrome(CS);コーガン症候群
侵される血管に優位性がない血管炎で、様々なサイズの血管(大、中、小)及び様々なタイプの血管(動脈、静脈、毛細血管)に病変を生じる。
Single organ vasculitis(SOV);単一臓器の血管炎
  • Cutaneous leukocytoclastic angiitis;皮膚白血球破砕性血管炎
  • Cutaneous arteritis;皮膚動脈炎
  • Primary CNS vasculitis;原発性中枢神経系血管炎
  • Isolated aortitis;孤発性大動脈炎
  • Others;その他
単一の臓器に生じるあらゆるサイズの動脈及び静脈の炎症で、全身性血管炎が限局的にあらわれたことを示す特徴がない。病変のある臓器及び血管のタイプが名称に含まれる(例えば、皮膚小血管炎、精巣血管炎、CNS血管炎など)。血管炎の分布は、臓器の中で単発性か多発性(びまん性)である。SOVと診断された患者の中には、別の徴候があらわれ、全身性血管炎として再分類される場合がある(例えば、皮膚動脈炎が後にPANとなるなど)。
Vasculitis associated with systemic disease;全身疾患に関連した血管炎
  • Lupus vasculitis;ループス血管炎
  • Rheumatoid vasculitis;リウマトイド血管炎
  • Sarcoid vasculitis;サルコイド血管炎
  • Others;その他
血管炎が全身疾患に伴ったり、全身疾患に続発する場合がある。名称(診断)には全身疾患を特定する接頭語を付ける。
Vasculitis associated with probable etiology;病因が判明している血管炎
  • Hepatitis C virus-associated cryoglobulinemic vasculitis;C型肝炎ウイルス関連クリオグロブリン性血管炎
  • Hepatitis B virus-associated vasculitis;B型肝炎ウイルス関連血管炎
  • Syphilis-associated aortitis;梅毒性大動脈
  • Drug-associated immune complex vasculitis;薬剤関連免疫複合体性血管炎
  • Drug-associated ANCA-associated vasculitis;薬剤関連ANCA関連血管炎
  • Cancer-associated vasculitis;腫瘍関連血管炎
  • Others;その他
特定の病因と関連している血管炎。名称(診断)には病因との関連を特定する接頭語を付ける。
:英文名称が変更された疾患
下線はCHCC2012で新たに追加された疾患
(Jennet JC et al: Arthritis Rheum 2013 Jan: 65(1); 1-11より一部改変)
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