多発血管炎性肉芽腫症(GPA) 多発血管炎性肉芽腫症(GPA)

多発血管炎性肉芽腫症(GPA)

疾患の概念

多発血管炎性肉芽腫症(GPA)はおもに①鼻、耳、眼、上気道(E)および肺(L)の壊死性肉芽腫性血管炎、②腎(K)の巣状分節性壊死性糸球体腎炎、③全身の中・小型動脈の壊死性血管炎の3つで特徴づけられる全身性血管炎症候群である。病理形態学的な特徴として、肉芽腫症と呼ばれるように、上気道・肺・全身の血管の壊死性肉芽腫性病変を認める。発症機序にC-ANCA(PR3-ANCA)が高率に関与するといわれている。元来、ウェゲナー肉芽腫症と呼ばれていたが、2011年4月に多発血管炎性肉芽腫症 granulomatosis with polyangiitis:GPAに呼称変更された。

疫学

  • 医療受給者証交付件数からみた2014年のGPA患者数は2,430人で、この10年間で2倍以上に増加している。
  • 好発年齢:30~50歳代に好発
  • 男女比:ほぼ1:1

臨床症状

初発症状は上気道(E)の症状の出現が約90%と多く、鼻出血、膿性鼻汁、中耳炎などを示す。次に、肺症状(L)は約80%に認め、咳嗽、血痰、胸痛、呼吸困難などを示す。全経過を通じて70~80%で腎炎(pauci-immune型巣状壊死性半月体形成性腎炎)(K)を示す。

組織所見

主要組織所見は、①上気道、肺、腎の巨細胞を伴う壊死性肉芽腫性血管炎、②免疫グロブリン沈着を伴わない壊死性半月体形成性糸球体腎炎、③小・細動脈の壊死性肉芽腫性血管炎などを認める。

診断

  • 厚生省によるGPAの診断基準を表17に示す。
  • 鑑別疾患にはサルコイドーシスなどの肉芽腫性疾患、EGPA、 MPAなどのANCA関連血管炎があげられる。
表17 多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の診断基準
主要症状
  • 上気道(E)の症状
    鼻(膿性鼻漏、出血、鞍鼻)、眼(眼痛、視力低下、眼球突出)、耳(中耳炎)、口腔、咽頭痛(潰瘍、嗄声、気道閉塞)
  • 肺(L)の症状
    血痰、咳嗽、呼吸困難
  • 腎(K)の症状
    血尿、蛋白尿、急速に進行する腎不全、浮腫、高血圧
  • 血管炎による症状
    • 全身症状:発熱(38℃以上、2週間以上)、体重減少(6ヵ月以内に6㎏以上)
    • 臓器症状:紫斑、多関節炎(痛)、上強膜炎、多発性単神経炎、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、消化管出血(吐血・下血)、胸膜炎
主要組織所見
  • E、L、K の巨細胞を伴う壊死性肉芽腫性炎
  • 免疫グロブリン沈着を伴わない壊死性半月体形成腎炎
  • 小・細動脈の壊死性肉芽腫性血管炎
主要検査所見 Proteinase-3(PR-3)ANCA(蛍光抗体法でcytoplasmic pattern,C-ANCA)が高率に陽性を示す
判定
  • 確実(definite)
    • E、L、Kのそれぞれ1臓器症状を含め主要症状の3項目以上を示す例
    • E、L、K、血管炎による主要症状の2項目以上と主要組織所見(1)、(2)、(3)の1項目以上を示す例
    • E、L、K、血管炎による主要症状の1項目以上と主要組織所見(1)、(2)、(3)の1項目以上およびC(PR-3)ANCA陽性の例
  • 疑い(probable)
    • E、L、K、血管炎による主要症状のうち2項目以上の症状を示す例
    • E、L、K、血管炎による主要症状のいずれか1項目および主要組織所見(1)、(2)、(3)の1項目を示す例
    • E、L、K、血管炎による主要症状のいずれか1項目とC(PR-3)ANCA陽性を示す例
参考となる所見
  • 白血球、CRPの上昇
  • BUN、血清クレアチニンの上昇
鑑別診断
  • E、Lの他の原因による肉芽腫性疾患(サルコイドーシスなど)
  • 他の血管炎症候群(顕微鏡的多発血管炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、結節性多発動脈炎など)
参考事項
  • E、L、Kのすべてがそろっている例を全身型、E、Lのうち単数もしくは2つの臓器にとどまる例を限局型と呼ぶ
  • 全身型はE、L、Kの順に症状が発現することが多い
  • 発症後しばらくすると、E、Lの病変に黄色ブドウ球菌を主とする感染症を合併しやすい
  • E、Lの肉芽腫による占拠性病変の診断にCT、MRI、シンチ検査が有用である
  • PR-3 ANCAの力価は疾患活動性と並行しやすい。稀にMPO‐ANCA(P-ANCA)陽性を認める例もある
(吉田雅治, 他. 厚生省特定疾患免疫疾患調査研究班 難治性血管炎分科会 平成10年度報告書. 1999:239-246より引用改変)
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